【前編】書道との出会いからアトリエ書道まで

毎月第二の土曜日に「アトリエ書道」という書道教室を主催されている、書家・美術家の松井由香子さん。
ハコでのお教室は今年で11年目を迎えます。

4月からは、毎月第三金曜日の午後、大人クラスと子どもクラスを新たに開講されることなりました。この機会に、書道との出会いやお教室のこと、そして書家・美術家としての松井さんの活動などについてうかがってみました。

前編「書道との出会いからアトリエ書道まで」と、後編「書家・美術家 松井由香子について」の2回に分けてお届けします。

松井由香子さんプロフィール:

6歳より書を始め、約18年間「墨華書道研究会」で学ぶ。2010年に『アトリエ書道』を荻窪で開講。現在は、アトリエ・ハコ(西荻窪)、TUMUGU(青山)、東京国際フランス学園(滝野川)等にて指導。フランス留学の後、文学やアート、自然から着想を得て作品を制作。フランスや日本で展示会を行っている。また、ヨーロッパの主要な美術館では「クリオグラフィー」(書と歴史)や「木グラフィー」(木との対話)など、独創的なパフォーマンスを行なっている。

 

 

ハコ:こんにちは。まず最初に、松井さんの書道との出会いから、アトリエを主宰されるまでを聞かせていただけますか?

松井:書をたしなんでいた祖父の知人が、近くで書道を教えていらっしゃいました。両親に勧められ、小学校に上がる少し前からその方のお教室に通い始めたのが書道との出会いです。

実はこの先生、私の両親にお見合いの話を持ってきてくださった方でもあるんです。そう考えると、書道を始めるきっかけをくださったと言うより、そもそも私が生まれたのも、その方のおかげと言えますから、不思議なご縁ですね。

ハコ:どんな先生でしたか?

松井:うーん、すごく真面目な方で…。
お手本通りにしっかり書かないと、永遠に書き直しです。と言っても永遠は無理なので先生の基準にパスしないと、最後はお手本を下に敷いて写さないといけないようなお教室でした。

そんなわけで、わたしはいつも母に不平を言っていましたが、いま思うとひどい生徒でしたね。

ハコ:厳しいお教室だったんですね。それでも続けられたということは、やはり書道が好きだったんでしょうか。

松井:残念ながらそうじゃないんです(笑)。最初の頃はただただ親に言われて通っていたという感じですね。
ただ、自分の中で続けていこうと思ったきっかけはあります。小学校3年生の時に、東京都から賞をいただいたんです。全校生徒の中で1人だけの受賞で、都の表彰式にも出席しました。その時から、もしかして書道は自分の得意なことなのかな、と思うようになりました。

ハコ:松井さんはフランスに留学されていますが、それまで書道を続けられたということですか?

松井:いえ、18年通って準師範の資格を取ったのを区切りに、私の中で一旦書道を終わらせました。
その頃は、書が自分の仕事になるとは全く思っていませんでした。

実はその頃、絵本を描きたいと思っていたことも理由の一つです。
「あとさき塾」という絵本作家の登竜門と言われていた塾があり、応募したらまぐれで通ってしまったんですね。それで3年くらい絵とストーリーをたくさん描きましたが、結局それも途中で諦めてしまったんです。

その後もなかなか、自分のやりたいことが見つけられなくて…。
ある時、もう一度原点に戻って書道の勉強のために中国にいこうと思い立ちました。

ところが中国への留学について、いろいろと調べてみると、言葉の問題が重要なことがわかりました。
相談に赴いた中国留学センターで、特に中国人は、口調も性格も強いので、まずは一年日本で勉強してからでないと意味がないと言われてしまいました。
当時の私は、今すぐに日本から出たい!という気持ちが強かったので、では留学先と目的を変えようと思い、すぐにプランBを考えました。
それがフランス行きでした。

そしてこのフランス語学留学が、思いがけず書道を再認識するきっかけになりました。
“書は芸術なんだ“ということに気づいたのです。

それまでは、「書道」とは技術を習得し、それを表現するだけのものだと思っていたので、続ける意味を見出せずにいました。

フランスで出会ったたくさんの人たち、アーティストでも、そうでない人たちも…。例えば家の中には、必ずと言っていいほど、何か芸術作品と言えるものが飾ってあったり…。そういった方々との出会いや様々な体験を通して、書は芸術だということに気づきました。

そこで“日本に帰ったら「書」を通して何かできないか“、と思ったことが、今の活動の原点かなと思います。

ハコ:中国ではなくフランスで書道の価値を再認識されたんですね。

松井:初めは自分でも、フランスと書道なんて一体なんの関連性があるのか、と懐疑的になったりもしましたが、活動を始めていくと、だんだんと接点が見つかってきて、今に至ります。
あの時留学先をフランスに選んでよかったと、今でも強く思っています。

2007年に日本に帰国し、今までにない書道教室を創りたいと思い、飯田橋にある旧日仏学院、今のアンスティチュ・フランセの図書館で司書をしながら、2010年6月に「自由に学べる書道教室」というコンセプトで、当時荻窪にあったアトリエ・ハコで活動を始めました。

活動開始当初のアトリエ書道

ハコ:お教室のコンセプト「自由に学べる」という点について、もう少し詳しく知りたいです。

松井:私が18年通った教室もそうであったように、一般的な書道教室では、書道協会に所属し、級や段を取ることを目標とします。

私はあまのじゃくなので(笑)、自分の教室では、今までの逆をやりたいと思いました。つまり、先生と全く同じように書くことには重点をおかず、皆さんがそこにご自分の感性を入れて書けているかを大事にするお教室にしたいと思ったのです。

勿論、筆の使い方、墨の擦り方、テクニック、和紙や道具についてなど、アドバイスしますし、書いてみたい書体、言葉、文字も生徒さんと相談しながら決め、お手本を書かせていただいています。

それから臨書を学びたい方にも対応しております。私自身は、集中力を養う面でも臨書することは大事な時間になっています。

また、皆さんが通いたいときに通えるように、入会金や月謝制度というのを設けずに、参加されたら一回分をいただくという方法にしました。

ハコ:なるほど、アトリエ書道の特徴がよくわかりました。ちなみにお教室以外に作品展も開催されていますね。

松井:はい、昨年はできませんでしたが、年に一度、生徒さんの作品展という形で発表の場を作らせていただいています。作品を人に見てもらうことはとても大事なことで、それが皆さんのモチベーションにもなりますので、できるだけ、毎年行いたいと思っています。今年はぜひできるといいですね。

アトリエ書道作品展にて、着物姿の松井さん。生徒さん達の作品は書体も文字もさまざま。

ハコ: 今回、平日に「子どもクラス」を開講されるとのことですが、背景を教えていただけますか?

松井:以前にも大人と一緒にという形で、お子さんも受け入れていたのですが、メリットとデメリットがあり、難しさを感じて積極的には受け入れをしていなかったんです。ただ、昨年からフランス系のインターナショナルスクール、東京国際フランス学園で小学2年生から4年生の子どもに課外授業として書道を教えるようになり、子どもクラスの可能性を感じるようになりました。

小学生だけのクラスは初めての体験だったので、最初は思っても見ないことばかり起きて大変でした。どこもかしこも墨だらけで真っ黒にしてしまったり、水書道に切り替えても水浸しになってしまったり…。

試行錯誤を重ね、顔彩や筆ペンを併用しつつ、墨を使うのは2人までにしたり、できる形が見えてきました。

一方子ども達は墨をするのが大好きなので、墨汁ではなく墨をすってから書くようにしたり、毎回プリントを作って日本文化について学ぶ時間を作ったり…。
インターナショナルな背景を持つ子どもたちに、日本文化を共有する体験によって私自身も学ばせていただいています。

東京国際フランス学園での課外授業

この体験を通し、子ども達と学ぶ機会を増やしたいという気持ちが芽生え、まずはアトリエ・ハコで新規のクラスを立ち上げたいと思いました。

ハコ:普段アトリエを主宰する上で、一番大事にしている点はどんなことですか?

松井:先ほど、アトリエのコンセプトでも少しお話ししましたが、「自由に表現してもらいたい」と思っています。

お手本の真似をするというのは、見る目を養い、テクニックを身につける上でもちろん大事なのですが、自由に表現するということを、このアトリエでは特に大事にしたいと思っています。
それぞれ持っている素敵な個性がありますので、私はその方が持っているものを最大限出して表現できる場を作れればと思っています。

子供クラスに関しても、基本的には同じ考えです。もちろん子供の場合は基礎が特に大事ですので、基礎の部分ではしっかりやりますが、それでも「こうでなくてはダメ」というようなことはしたくないんです。
その子が持っているものを出せるように関わりたいと思っています。

ですので、子どもクラスについては、その点をご理解くださる親御さんとそのお子さんに来ていただきたいと思っています。

ハコ:ありがとうございました。
後半は、書家・美術家としての松井さんのご活動についてうかがいます。

*平日クラスは毎月第三金曜日、4月16日(金)からのスタートです。
ご興味のある方は下記URLから詳細をご参照のうえお問合わせください。
アトリエ書道金曜日クラスについて

▷ 後編「書家・美術家 松井由香子の活動」も読む。

書家・美術家松井由香子さんのURL:http://yukakomatsui.com/ja/top/
アトリエ書道URL:https://atelier-shodo.jimdofree.com/

カテゴリー: Workshop

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